録音を聞くときに留意していること

フィルムスコアフィルの本番は聴きに行けませんでしたが、指導した特権で特別に団員向けの録音を聴かせていただきました。今回は録音を聞く時の留意点について、お話したいと思います。

アマチュアの場合、表現したい音がなかなか客席に届きません。ウィーンフィルやベルリンフィルの音が会場全体に届くのは音が大きいからだけではありません。小さい音もやわらかい雰囲気も伝わります。金管に関して言えば、どんな吹き方だと聞こえ、どんな吹き方だと聞こえにくいのか「金管基礎理論」で説明できますが、それはまたの機会にします。

客席で実際聞く音と録音される音は必ず違います。「この人の音は客席でよく聞こえたのに、あまり大きな音で録音されていない」「この人の音は客席で聞こえなかったが録音ではよく聞こえる」と思うことはありませんか?録音を聞いて判断する時は、ホールではどんな音に聞こえたのか、できる限り各奏者の特徴を鑑み、想像する必要があります。

フィルフィルを例にあげます。私は前回の演奏会を会場で聞きました。管分奏の音も記憶しています。その記憶を生かして録音を聴いたので、今回の本番がどんな演奏だったのか想像できました。

録音だけで判断するのは危険です。普段の練習での記憶を元に聞いてみてください。違った見方ができると思います。

音量のバランスだけでなく音色も違って聴こえることがあります。「心地よく聞こえる柔らかい音は、それほど客席には届いていなくても立派に録音される傾向がある」と数多く聞き比べた経験から感じています。会場ではあまり聞こえななかった失敗が録音にしっかり記録されている可能性があるし、その逆もあります。

聞こえてしまう失敗とあまり聞こえない失敗について(ホールで聞いた場合)も金管基礎理論を活用できます。これもまたの機会に説明します。

東京金管“Blasmusik”研究会 代表 小林 正樹